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 システム開発の利害関係は、旦那と芸者と幇間(たいこもち)の関係とまったく同じである。「よきにはからえ」と言うユーザ企業(旦那)、旦那様のご機嫌取りに終始し、どれだけお金を使わせることができるかを競うSIベンダ(芸者)、そしてお座敷で旦那様と芸者衆のご機嫌を取りながらおこぼれを拾う、二次、三次とネズミ講のように幾多にも連鎖する下請けの開発会社(幇間)。これがシステム開発の姿である。システムに関わる人々の意識の変化なくして、この状況が変わることはない。

 

 その一方で、それぞれの利害は激しく対立し、


「今日まであらゆる社会の歴史は階級闘争の歴史である」
(『共産党宣言』カール・マルクス/フリードリヒ・エンゲルス著)

という側面も持っているのが大変興味深い。

 

 ユーザ企業は、少々の機能の追加やデータ項目の追加を依頼しただけなのに、SIベンダや下請けの開発会社から難色を示され、そうかと思えば納品したシステムは使いものにならず修正につぐ修正、運用を開始したのはよいが、その運用コストは膨大に、という具合にろくな目に遭わない。

 

 SIベンダは少々の赤字となっても、運用のアウトソーシング先となり、あるいは保守を独占することで赤字の埋め合わせが可能だが、下請けの開発会社は、開発費用を大幅に削られたうえに短い納期での納品を要求される。テスト工程に入っているというのに、仕様変更につぐ仕様変更への対応を余儀なくされ、結果として収益どころか赤字、という具合である。そして、連鎖する下請けはいかにして受発注の上位に立つかに血道を上げ、安易な薄利多売による企業規模の拡大に走る。

 

 私自身は、この15年ほどの間に、プログラマ・チームリーダ・プロジェクトマネージャ・コンサルタント(業務分析、プロセス改善、プロポーザル支援、技術調査など)、プロダクト責任者・システム発注担当者・会社役員として、システムに関わる業務の多くを経験してきた。そこから経験則として学んだことは、プロジェクトを円滑に推進するためには、メンバそれぞれがひとつのプロセスを経ていなければならないということである。そのプロセスとは、

 

  1. プロジェクトにおけるさまざまな作業を知り
  2. プロジェクト内のそれぞれの立場や仕事の違いを理解し
  3. そこからプロジェクトにおける自分自身の使命を明確に意識し
  4. プロジェクトのゴール(それは常に不明確ではあるが)をプロジェクトメンバ全員で共有すること

 

というものである。

 

 このプロセスを経た結果、管理された状態での迅速なプロジェクトの遂行が可能になると考えている。その結果として初めて、「失敗しない」「徒労感の少ない」「充実感を得られる」仕事と呼べるものになるのではないだろうか。

 

 そのためには、ユーザ企業とSIベンダの両者が、IPT(Integrated Project Team:統合プロジェクトチーム)として強い結束力を持ち、プロジェクトを成功に導く必要性があるだろう。プロジェクトチームが強い結束力を持つためには、プロジェクトメンバそれぞれが最終的なプロジェクトの成功を目的として、お互いの置かれている立場や利害を理解し、プロジェクトにおける行動規範を持たなければならない。

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1.2. システム開発における利害関係上の課題 ハッピィ・エンジニアリング関連ページ

1.1. 本書の位置づけ
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1.3. 情報システム投資における課題
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1.4. 情報システム開発における課題
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1.5. 心の叫び
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