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10.2. 段取り八分

ハッピィ・エンジニアリング表紙

 プロジェクトマネジメントに要求されることは、QCDの達成である。そのためには、すでに問題点として指摘した通り、作業内容の明確化〜作業に必要なリソースの検討〜作業ボリュームの見積もり〜実施スケジュールの作成と、きちんとした手順に従った段取りが必要である。

 

 ところが、ちゃんとした手順に従って計画したとしても、このスケジュールを達成するには、これだけの要員が必要になるが、それだけの要員をアサインするために必要なコストが出ない、というような矛盾が発生することがある。

 

 コストと納期は、相反する要素を持っているため、両者を満足させることは難しい。まずは、コストと納期のどちらが優先されるべきものかを考えるところから始めなければならないだろう。その判断は、あくまでもシステム化の前提となるビジネス上の要求を基に行わなければならない。

 

 現実のビジネスでは、経営戦略に基づいた各種施策を打つべき時期が存在する。どれだけ優れたシステムを開発したとしても、タイミングを逃すと「経営的な価値」は失われる。

 

 最初に考慮すべきなのは「納期」である。この納期が経営上のどういう要請からきているものかをユーザ企業側で明確にする。実際には、システムの運用開始が数カ月遅れても問題のないプロジェクトも存在する。しかし、業界内での競争優位の確保や、他社に後れをとっているサービスのキャッチアップなどが目的のシステムは、スケジュールを遅らせるわけにはいかない。

 

 ただし、SIベンダ側ではスケジュールを遅らせることに問題があるかどうかの判断は不可能である。さらに、ユーザ企業のシステム部門もそれを十分に理解しているとはいえない状態の場合は、求められている納期が「絶対的なものかどうか」の判断は難しい。そのため、最終的な判断は、ユーザ企業の経営陣やユーザ部門に仰がざるを得ない。ここで初めて「本当の納期」を見極めることができる。

 

 次に「本当の納期」を前提条件として、要求仕様を満たすシステムが納期までに作成できるかどうかを判断する。このときには、コストのみならず、実際の要員割り当てまで意識して判断する必要がある。どうしても間に合わないと判断された場合には、個々の要求や機能ごとに優先順位を付け、優先度の低い機能を開発対象から外すなどの「スコープの再検討」が必要になる。もし、機能の限定などができればそれに越したことはないが、スコープを狭めることができない場合には、昔から行われてきた「段階的なリリース」で開発を進めざるを得ない。

 

 もちろん、段階的リリースはひとつのサブシステムの中で、一次リリース分と二次リリース分、三次リリース分……が混在するから、ひとつのチームが保守と新規開発の両面を行わねばならず、極めて難しいスタイルであることはよく知られているとおりである。

 

 さて、コストと納期の矛盾については、これで優先順位付けのための材料が揃った。これより後の節では、作業内容の明確化〜作業に必要なリソースの検討〜作業ボリュームの見積もり〜実施スケジュールの作成といった、具体的なプロジェクトの実施計画について説明していく。これらのプロジェクトマネジメント要素は、プロジェクトマネジメントツールにより、比較的簡単に管理することができる。さらに、プロジェクトマネジメントツールは、たいていの開発プロジェクトでは事前に用意されている。ただし、ツールは頭脳とはなり得ない。そのため、本節以降では、ツールを使うことを前提とした上での考慮点を中心に述べることにする。

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