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10.5. リソース計画

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 スケジュール、コスト、品質を決定する一番の要因はリソースである。リソースとは、プロジェクトを実施するうえでコストを伴うものすべてを意味する。システム開発プロジェクトでは、人的資源・開発機器・導入機器・ライセンス費用などが該当する。料金・資金などの金銭はリソースとみなさず、リソース調達の手段として扱う。

 

 短い納期要求に対応し、品質を維持するためには、その要求を達成できるだけの十分なリソースの量と質の確保が重要である。ところが、実際のプロジェクトでは、プロジェクトメンバの数、スキルの両者が明らかに不足するために残業地獄に陥っているケースがあまりにも多い、という実態がある。残業地獄が手抜きを生み、品質を低下させ、バグつぶしを延々と繰り返す結果を生んでいることを、否定はできないだろう。しかし、リソース計画にはさまざまな難しさがある。無理に納期を圧縮しようとすると、どこかで手抜きが発生し品質が低下する。プロジェクトメンバの増員は直接コストにはね返る。

 

 さらに、組織的な問題もある。過去において実施したプロジェクトの規模と比較したときに、それよりも多いリソース計画の正当性を訴えるのが難しい。また、スキルのある要員がほかのプロジェクトに入っていて、現実的にアサインするのが困難な場合がある。さらに、高いスキルを持つとされている要員をアサインした場合にも、その要員の生産性は、実際に作業に入ってみるまで未知数である。

 

 しかし、リソース計画が現実と乖離するとはいえ、それが不要ということにはならない。組織的なフォローを受ける必要があるならば、具体的な計画と現実にどのくらいの差があるかを、定量的に説明できなければならない。実質的なプロジェクト運営においては、計画段階で発覚した無理に対して、組織を巻き込んだ解決を行わざるを得ない。プロジェクト期間全体を通して継続的に組織的な調整を図り、社内の合意を得ることなくしてプロジェクトの成功はあり得ないのが現実の姿である。

 

 さらに、プロジェクト実施中のリソースの追加投入はスケジュールの点から見ても難しい。見積もり依頼・業者選定・発注などに多くの期間を必要とし、欲しいときに欲しいリソースをタイムリーに獲得するのは不可能である。計画の合意を得ておかなければ、必要なリソースが獲得できることはないと考えておくべきであろう。

 

 WBSの作成でプロジェクトに必要な作業を分解したのと同様に、リソースも入念にチェックすることで、プロジェクトにおけるリソースの配置、スケジュールの作成、より正確性の高いコスト見積もりに発展させることができる。リソースを計画するのに利用するのがRBS( Resource Breakdown Structure)である。RBSはWBSと同じような構造を持つ階層型のドキュメントである。WBSがプロジェクトを成果物の要素によって分解したものであるように、RBSでも成果物それぞれに対する要素ごとのコスト比率を把握可能な形に分解する。

 

 つまり、それぞれのリソースには、利用する際に必要となる単位を統一しておく必要がある。基本的には、金額(しかも、オフショア開発などを考慮すれば、日本円で統一する必要があるだろう)にしておき、それぞれに使用時間・作業時間・作業単価などの注釈を加えておくことで、明確化する。

 

 スコープの変化などが発生した場合にも、WBSを更新するのと同じように、RBSに記載されているリソースを修正し、コスト見積もりに反映させることで、変化に対応したプロジェクトマネジメントが可能になる。

 

 WBSの各ワークパッケージの総和がプロジェクトの全体作業になるように、ワークパッケージそれぞれにRBSで定義されたリソースを割り当て、その単価を積算すると、プロジェクトのコストを見積もることができる。ただし、これを行うには、スケジュールの作成と、それぞれのワークパッケージの工数が見積もられている必要がある。

 

 RBS作成の場合も、WBSと同様にトップレベルを決定することから作業を開始する。RBSのトップレベルとなる要素は、以下のものが一般的である。

 

  • 人的資源
  • 材料や導入機器
  • ツールや機械、開発機など
  • 料金やライセンス

 

 人的資源には、プロジェクトに参加するすべての人的資源を網羅する。プロジェクトに必要な人的資源が網羅されていることが重要である。

 

 材料や導入機器とは、プロジェクトの成果物となる性質のものである。つまり、これらはプロジェクトの完了と同時に納品されるものである。

 

 ツールや機械は、プロジェクトの成果を納品するために必要な、業務で使用するものである。システム開発の場合、開発環境として必要なハードウェア・ソフトウェアなどが含まれる。高額なものはリースやレンタルで調達されるが、購入したほうがコストダウンにつながる場合もある。

 

 料金やライセンスとは、実装や導入は伴わないが、プロジェクトの実施に必要な経費である。例えば、プロジェクトに必要なツールのライセンス料・税金・保証金といった類のものが該当する。

 

 リソースを分解する場合、すべての要素に一貫性を持たせて詳細化することは非常に難しい。しかし、下位のレベルに分解する際には、その分解基準が同一になっている必要がある。

 

 システム開発においては、人的資源のコスト比率が非常に高い。いうまでもなく、さまざまなスキルを持つメンバを必要とする非常に重要なリソースである。

 

 人的資源の分解基準としては、以下のようなものが含まれる。

 

  • 仕事上の役割
  • スキルレベル
  • 作業場所
  • 管理単位
  • 専門的な資格

 

 システム開発上、無難な分解基準は、仕事上の役割での分解である。専門性の高い要素を多く必要とするプロジェクトであれば、仕事上の役割を組み合わせた上で、スキルレベルでの分解を行うかもしれない。

 

 ときとして、有資格者でなければその業務を行う権限が持てないような場合には、それぞれの資格ごとに分解を行う。例えば、公認会計士・税理士・弁護士・弁理士などである。

 

 管理単位とは、マルチベンダを統括してプロジェクトマネジメントを行うような場合の分解基準である。つまり、分解基準はそれぞれの作業を発注する企業や組織である。

 

 社内の複数の事業所が連携して作業する場合には、作業場所が分解基準となる。

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