このエントリーをはてなブックマークに追加LINEで送る

10.7. スケジュールの作成

ハッピィ・エンジニアリング表紙

 スケジュール作成においては、カレンダー、すでに作成されているネットワーク図、WBSのワークパッケージに対応して見積もった所要時間を使用する。まず、ネットワーク図に所要時間を埋めていく。

 

 この状態のスケジュールは、まだまだ完成とはいえない。その理由のひとつは、納期とのギャップ、もうひとつはリソースへの負荷の偏りである。つまり、この段階ではスケジュールの短縮とリソースの負荷を平準化させる作業が残っている。

 

 プロジェクトスコープを狭めずに、納期とマッチしたスケジュールを作成するには、以下の2つの方法がある。

 

  • 作業の依存関係を変更し、前後関係を並行関係に変更する
  • リソースの追加により作業期間の短縮が見込めるワークパッケージにリソースを追加する

 

依存関係の変更

 作業の前後関係を並行関係に変更することは、なんらかの事象により停滞しがちなシステム開発作業では頻繁に行われることである。しかし、中小規模の開発プロジェクトでは、並行作業がひとりのメンバによるマルチタスクとなってしまい、逆にスケジュールを遅らせる原因となる場合もあるので、十分に注意しておきたい。

 

 例えば、ひとりのメンバが、クリティカルパス上にある作業と、ほかの作業を並行して行っていた場合、クリティカルパス上の作業の進行に大きく影響する。クリティカルパス上の作業の遅れは、即座にプロジェクト全体の遅れとなる。また、前後関係を並行関係に変更した場合、並行関係となっている作業のすべてが完了しないと、後続の作業に大きく影響する。

 

 このようなスケジュールから見た問題のほかに、マルチタスクでの作業は生産性と品質を大幅に低下させる側面がある。

 

  • 作業を切り替えるときの時間のロス
  • すべての作業の締め切りを気にしながら仕事を進めるストレス
  • さまざまな作業の前提条件の把握不足
  • 進捗を維持できなくなった場合の仕事の積み残し、先送り、品質の低下

 

 いろいろな作業を交互に行っていくことは、その場その場での頭の切り替えが必要となる。別の仕事に切り替えるということは、作業の前提を振り返り、これまでの進行状況を確認し、それから作業目標を立てるという思考の流れがあり、並行している作業が多いほどロスが増えていく。

 

 個々の作業に対する優先順位の組み立てや締め切り、品質を意識しながらの仕事は、集中力の低下やストレスにつながる。複数の仕事をさみだれ式に開始していくことで、その作業に必要な前提条件や情報の把握が十分でなく、必然的に品質を低下させているという事態も頻繁に起こり得る。

 

 さらに、並行している作業のどれかが遅れた場合、ずるずるとほかの作業も遅れ始めることがある。仕事があふれてしまった最悪の場合は、手抜きや積み残しといった形で、時間を使った割に成果が残っていないということもある。

 

 リードタイムを設けて先行着手することで、マルチタスクのリスクを軽減するという考え方もあるが、前プロセスで作られた成果物の精度が低ければ、結局前プロセスの作業からやり直しになる。また、前プロセスで決まっているべき内容が決まっていないまま後続の作業に入るということは、後続の作業を中途半端に仕掛かった状態でほかの作業を同時にこなしているような状態になりがちである。

 

 依存関係の変更には、これらを十分に加味したうえで検討しなければならない。

 

リソースの追加

 リソースの追加は無難な選択肢ではあるが、コストとの兼ね合いが出てくる。リソースの追加を検討する場合には、以下のような優先順位で考えてみるとよい。

 

  • プロジェクトの初期に着手する作業
  • プロジェクトの後半の作業にリソースを追加したとしても、すでにスケジュールが遅れており効果が出にくい場合がある。後半に余裕を持てるように初期段階の作業を前倒ししておく。

  • 簡単な作業
  • 社内リソースや、手が空いているメンバを活用して作業できるような比較的簡単な作業にリソースを投入する。難易度の高い作業は専門性の高い要員が必要になる。スキルの高い要員を追加するのはコスト面で難しいうえに、「プロジェクトメンバの生産性は、プロジェクトの作業に入るまでわからない」という原則の上で、メリットが少なくなる可能性が高い。

  • 所要時間が長い作業
  • 所要時間が2〜3日の作業を1日にするのは難しいが、長期間の作業であれば、所要時間を数日減らせる可能性がある。

  • 自社内のリソースが追加できそうな作業
  • 外部に委託する作業であれば、要員のアサインや契約などの時間のロスが多い。自社内のリソース状況を把握したうえで、どの段階でどのメンバの応援を依頼できるかを想定してスケジュールに組み込み、事前に組織の了解を得ておく。

  • 技術的難易度の高い作業
  • 所要時間を見積もったものの、遅延が想定されるような技術的な課題解決に、十分なスキルを持つメンバを投入しておくことで、後続作業への影響の回避を考慮する。

  • 後続作業の多い作業
  • 後続作業が多い作業は、遅延の影響が大きい。また遅延した場合、複数の後続作業のスケジュールに影響し、プロジェクト全体への影響が莫大なものになる可能性がある。このような作業は遅れが発生しないように、あらかじめ手を打っておきたい。

 

 これらをふまえ、コストを含めて十分なシミュレーションを重ね、納期とマッチした現実的なスケジュールを作成しなければならない。

シェアしてくれると嬉しいです!
このエントリーをはてなブックマークに追加LINEで送る

10.7. スケジュールの作成 ハッピィ・エンジニアリング関連ページ

10.1. 段取りなしの現場状況
ソフトバンククリエイティブから刊行されたハッピィ・エンジニアリングが無料で読めるサイトです。
10.2. 段取り八分
ソフトバンククリエイティブから刊行されたハッピィ・エンジニアリングが無料で読めるサイトです。
10.3. 作業の明確化
ソフトバンククリエイティブから刊行されたハッピィ・エンジニアリングが無料で読めるサイトです。
10.4. ネットワーク図の作成
ソフトバンククリエイティブから刊行されたハッピィ・エンジニアリングが無料で読めるサイトです。
10.5. リソース計画
ソフトバンククリエイティブから刊行されたハッピィ・エンジニアリングが無料で読めるサイトです。
10.6. 見積もり
ソフトバンククリエイティブから刊行されたハッピィ・エンジニアリングが無料で読めるサイトです。
10.8. 進捗管理
ソフトバンククリエイティブから刊行されたハッピィ・エンジニアリングが無料で読めるサイトです。

ハッピィ・エンジニアリングとは? 書籍を読む プロフィール コンサルティング