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14.3. 決定権と人事権

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 明らかに正常ではないプロジェクトを正常化するために必要なことは、権限を持つことである。権限なくして、正常化をすることは非常に困難である。今までの間違ったやり方を捨て、正しい方法論を適用するには、十分な権限が必要である。プロジェクトに対して決定権と人事権を持つことが火消し役のリーダには必須の条件である。

 

 プロジェクトの方針を決めて動かしていくことについては、異論が出る可能性は少ないだろう。しかし、人事権に関しては、対応が難しい。昨今のプロジェクトの実態は、マルチベンダや、あまりに階層化された組織によって構成されている。そのため、契約上の問題や責任範囲などから、プロジェクトメンバの交代が必要と思われる場合においても、交代させることができないことが多い。とはいえ、ここでは、プロジェクトメンバを交代させるべき場合について考えておくことにしよう。

 

 火がついたプロジェクトでは、新しいメンバを入れたとき、既存のメンバにプロジェクトに必要な情報を伝達する余力すらないのがほとんどである。そのため、要員の追加投入を避けるのが原則といわれている。しかしながら、往々にして要員の追加投入は有効である。特に、とにかく頭数が必要なプログラミングプロセスにおいては、プロセスとして事前に意識されている「要員の追加投入」が行われる。以下に、要員の追加投入が有効な典型例を示す。

 

・あまりにも要員スキルが低いので、残り作業の何割かを新規メンバにやらせる(実質的な要員入れ替え)
・データベースやネットワークなどのエキスパートの投入
・仕様変更による機能追加
・少なくともモジュール化がしっかりしており、ほかとの関連性が乏しいプログラムの開発

 

 プロジェクトに火がつく多くのパターンには、無理なスケジュールと、その無理をごまかすための課題の棚上げや、虚偽の進捗などがありがちである。中途半端に作業をやり残したり、課題を棚上げしたツケが多く残されている。このような場合には、山積した課題を解決する能力がプロジェクトメンバにあるかどうかが、非常に重要な判断基準である。プロジェクトメンバに課題解決能力がない場合には、一部の要員を変更することなしにプロジェクトを進めていくのは困難になる。

 

 さらに、多くの場合、チームのモラルは低下し、適材適所に必要なスキルを持つ人材が配置されていない。スキルがあり、仕事を任せられるだけの十分な実行力を持ったエンジニアを、適材適所に再配置することが必要である。特に、課題解決能力が高く、品質管理ができるだけのスキルを持ったエンジニアがアサインされている必要がある。

 

 メンバの入れ替えには当然のごとくオーバーヘッドが発生するが、もはや進まなくなっているプロジェクトにおいて、そのオーバーヘッドの影響が数日にとどまれば、メンバの入れ替えを検討する価値は十分にある。

 

 スキルマッチしないメンバを地獄のプロジェクトから解放し、やり遂げるスキルを持ったチームを再構成することなくして、順調にプロジェクトの終結には向かえないと認識すべきである。

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