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14.4. 実態の把握

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 プロジェクトに参加して、まず行うことは実態の調査と、火消し役に対する要求の確認である。どのようなプロジェクトなのか、本来のスケジュールや品質・コスト要求はどのようなものだったのか、プロジェクトの現状はどのようになっているのか、プロジェクトの終結に対する現時点での妥協点はどこなのか、などを把握しなければならない。

 

 プロジェクトに参加する段階で、漠然とした事情と要求は受けているはずである。その前提を一度は捨て、客観的にプロジェクトの本来の姿と現状を把握するところから、仕事がスタートする。

 

 体制図・ガントチャート・課題一覧・会議議事録などを始めとした管理系のドキュメント、プロジェクト計画書・設計書・テスト仕様書などの成果物を参照し、プロジェクトの実態を把握する。ドキュメントを参照していると、不明点が出てくるはずである。不明点はそのつどプロジェクトメンバに問い合わせ、実体を明確にすると同時にコミュニケーションを取っておく。このようにして、プロジェクトの概要、達成すべきゴール、現状をつかんでから、プロジェクトメンバを招集し、ミーティングを開始する。プロジェクトに発生しているさまざまなトラブルの事象に関する大枠の理解と、プロジェクト内の人間関係をなんとなく把握することが目的である。

 

 プロジェクト体制に対する不満、作業プロセスの問題、個々に発生しているトラブル、プロジェクトの停滞要因など、プロジェクトメンバが抱えているさまざまな事象を収集することが一番の目的である。このミーティングでは、改善のプランを含めてヒアリングしてもよいが、まだ改善策を決定する必要はない。なぜなら、「会議に勝つのは声の大きい者」であり、本当に重要な情報がまだ隠れているからである。このミーティングでは、プロジェクトメンバへの批判や、以前の体制に対する評論は一切せずに、現状のヒアリングに徹することが重要である。

 

 さらに、隠れている重要な情報を引き出すために行うことは、メンバ個人に対する面談である。現状で困っていることは何か、というレベルの質問でかまわない。10〜30分程度の時間で、できる限り多くのメンバとリラックスできる環境で会話し、全体会議では隠れていた情報を収集する。

 

 このように情報を収集した後も、毎朝各メンバのもとを回り、作業の現状や問題点などについて簡単にヒアリングしたり、意見交換したりするように、各メンバとのコミュニケーションを密にしておくことが、先々のプロジェクト運営に効果をもたらす。情報の収集とともに重要なことは、隠れている問題に対して相談に乗ることである。その問題を解決するためには、どのような手段が考えられるかを一緒に考え、ベストと思われるものを選択する。プロジェクトリーダが各メンバの相談相手として役に立つことができれば、チーム内の信頼関係や動機づけにもなる。ただし、注意すべきことは、指揮命令系統を壊してチーム内が混乱しないようにすることである。各メンバとの会話により収集した課題事項への対処や指示は現状の指揮命令系統の中で行うべきである。つまり、各チームのリーダに状況を伝え、課題への対応はチームリーダの指示の下で行うようにする。現状の指揮命令系統を崩さず、問題の先送りなしに作業が進むようなフォローを心がけることが、チームメンバのやる気をかろうじて維持する方法のひとつである。

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