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4.2. 経営戦略

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 現在では経営戦略上の観点から的確なシステム投資の必要性が論じられていることは、すでに述べたとおりである。その経営戦略上の観点には以下のようなものがある。

 

  1. 企業価値の向上
  2. 業務の全体最適化
  3. 市場変化への対応
  4. ベンダ依存からの脱却

 

企業価値向上の観点

 システムはビジネス基盤だが、あくまでもツールである。必須のものではあるが、それが差別化にはつながらない。このことは、「ベストプラクティスの集大成」として販売されている統合パッケージにしても、各社が導入していればシステム単独での効果は横並びになることから明白である。差別化を行うために重要なのはビジネスモデルなどの戦略であり、それを実現するためにどのようなシステムを必要とするか、ということを見失ってはならない。つまり、そもそもの前提として掲げられるべきことは、企業の経営方針や目標、中・長期計画である。

 

業務の全体最適化の観点

 業務に関与しているのが人間だけであれば、その流れを変更するのは比較的容易である。しかし、業務の中にシステムが介在する以上、「ソフトウェアはソフトではない」という言葉が表現するように、その変更は容易なものではなくなる。過去においては、会計処理のように比較的単一な機能を単独の部門で利用し、事業の結果を処理するのが目的であった。しかし、現在では、システム化された業務は必ずしも定型的なものばかりではない。さらに複数の機能を持つ複雑なシステムが相互に連携し、その利用者は複数の部門、あるいは複数の企業、エンドユーザまで、システムにより多岐にわたっている。

 

 このように複雑化したシステムを運用が開始された後で変更するには、再設計・再実装・再テスト・データ移行・システムの切り替えなどの多くの時間とコストが必要となり、同時にリスクが伴う。このように、もはや複雑になったシステムを部分的に最適化することは、投資に対する効果が薄くなってきているのである。つまり、システムの投資効果を十分に発揮するには、経営戦略に即して業務のリエンジニアリングを検討したうえで、統一的なシステム戦略を固める必要がある。

 

市場変化への対応の観点

 変化を事前に予知することは不可能である。しかし、市場は劇的な変化を続けている。その中で経営者に求められているのは、市場の変化に対応して迅速に経営戦略を変化させていくことである。変化に対応しやすいビジネスモデルを作ることが、重要な要素のひとつである。

 

ベンダ依存からの脱却の観点

 システム調達を1社のSIベンダに固定すると、開発から運用までワンストップサービスを受けられる一方で、割高感が強い。その半面、入札などによりシステムごとに調達するSIベンダを変えた場合、システム間の連携処理を行う際にどのベンダも責任逃れをする傾向にあり、プロジェクトを推進させるのが困難な一面がある。当然の結果として、ユーザ企業の情報システム部門はSIベンダに丸投げせず、運用や保守を行うための情報をきちんと押さえておく必要に迫られている。調達に際しては、RFP、SLA(Service Level Agreement:サービス内容の詳細と保証内容が記載された契約書)の作成や入札方式の整備など、標準的な調達プロセスの整備や現行システムのコスト構造の再認識、運用状況の把握などを行わなければならない。

 

 これらをふまえたうえで、経営陣とシステム部門は、現状のシステムのコスト構造や利用状況の把握、BPR実現のアクションプラン、システム適用範囲の決定、ROIの検討、システム化の優先順位づけなどを行わなければならない。

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