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第7章 要件定義

ハッピィ・エンジニアリング表紙

 「使えないシステム」が生まれる原因のほとんどは、要件定義の軽視や、要件定義とシステム設計という工程において必要不可欠な「一貫性」が失われていることである。「2.1 丸投げ文化」に記載した、設計と製造の分離を行ううえでは、要件定義とシステム設計における一貫性を維持することが必須となる。さらに、受発注金額を適正にするためには、要件定義工程の成果物がRFPに含まれている必要がある。

 

 しかし、ほとんどのシステム開発プロジェクトにおいては、要件定義以降の工程をSIベンダにすべて丸投げしているのが実情であろう。改めて述べるまでもないが、第2章に記述したとおり、安易にSIベンダに丸投げせず、ユーザ企業がITガバナンスを確立し、システム開発の主導権を持つ必要性と意義は大きい注19。

 

 システム調達の理想を考えた場合、要件はユーザ企業と「システム設計事務所」との共同作業により、システム開発がスタートする前に「仕様」として確定させ、RFPの一部としなければならない。ユーザ企業が中心となって、「システム設計事務所」と要件をまとめることで、

 

  • SIベンダが要件の不明確を理由に上乗せしているコスト
  • SIベンダが「あいまいなキーワードを解釈する作業」
  • ユーザ企業とSIベンダの「あいまいなキーワードによる伝言ゲーム」

 

というデメリットを改善し、調達コストの削減、要件とシステムのギャップの減少、作業スコープと責任範囲の明確化という大きな効果をもたらすことが可能になる。

 

 このように、ユーザ企業主導により要件定義をきちんとまとめあげることで、完成したシステムの品質が向上し、システム開発に必要とする時間やコストを大幅に減らす結果につなげていくことが可能となるのである。

第7章 要件定義 ハッピィ・エンジニアリング記事一覧

7.1. 要件定義の重要性 ハッピィ・エンジニアリング

 一般的に、システムの欠陥のほとんどは、要件定義プロセスや、その分析プロセスで発生しているといわれている。つまり、要件定義プロセスで、すでにシステムの品質の多くが作り込まれているのである。要件定義プロセスで作り込まれた欠陥には、要件自体があいまいなために誤解を生んだもの、要件の抽出漏れ(要件リーク)...

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7.2. 要件定義プロセスにおける課題 ハッピィ・エンジニアリング

 システムの欠陥の多くは、不正確な要求、誤解された要求、そして要件リークや要件クリープに起因している場合が多い。これらの「間違った」要求は、設計者の解釈によって設計書に反映され、実装されていく。2005年に発生した東京証券取引所でのシステム停止やみずほ証券による誤発注など、「システム障害」として語ら...

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7.3. 歴史的背景 ハッピィ・エンジニアリング

 要件定義の不備による問題をどのように処理するか、という観点でシステム開発の方法論やトレンドが変化してきたという歴史がある。まずは、要件定義にまつわる方法論の変化について整理する。要件定義に関わるシステム開発のアプローチは図7-1のように変遷してきた。要件定義工学的アプローチ「キチンとやればキチンと...

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7.4. 相互誤解 ハッピィ・エンジニアリング

 要件定義工程は、ユーザ企業主導で行うべきものではある。とはいえ、現実的にはプロジェクトの利害関係者全員が関わる共同作業となる側面がある。 要件定義の話題として、「ユーザは自分が欲しいものがなにかをわかっていない」「開発者は業務上のニーズを理解しない」といった、お互いの立場や方向性・能力の違いからく...

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7.5. 要件定義プロセス ハッピィ・エンジニアリング

 要件定義プロセスの目的は、要件の抽出と、それに対する仕様(要件仕様、要求仕様と呼ぶ)を作成することである。要件定義書や要件仕様書を記述する際には、以下のような観点をふまえて作成する必要がある。ユーザ企業側、SIベンダ側の双方が理解可能であることプロジェクトの全プロセスを通じて追跡できること文章と図...

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7.6. 要件定義の未来像 ハッピィ・エンジニアリング

 一般的な開発方法論は、開発側の視点で概要から詳細にブレイクダウンしていく方法論である。また、開発方法論は技術者が提唱したものがほとんどである。つまり、SIベンダ自身が理解できる表現方法をユーザに教え込もうとしてきたのである。 SIベンダが主導となり、ユーザに教え込もうとしてきたという点に気がつくと...

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