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8.3. プロジェクトマネージャの役割

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 プロジェクトの最終責任を負うのが、プロジェクトマネージャに課せられた使命である。プロジェクトが失敗に終わらないように運営していくことが、プロジェクトマネージャの役割である。

 

 技術者の仕事との大きな違いは、常にプロジェクト全体を意識し、なんらかの見込みをつけながら作業を進めていくことである。技術者であれば、個々の技術要素や課題をひとつひとつ完全にクリアしながら進めることができるが、プロジェクトマネージャがこのような方法を採ると、プロジェクト全体が停滞し、リソースを有効に活用することができなくなってしまう。

 

 システム開発は、変化が激しく、多くの利害関係者が参加し、また人への依存度が高い仕事である。このようなシステム開発の特性を理解したうえで、いかにしてQCDの要求に応えていくのか、という課題を解決することが、プロジェクトマネジメントの難しさである。

 

 プロジェクトマネージャの具体的な役割として、

 

  • 利害関係者との合意
  • 計画の立案
  • 情報提供
  • 意思決定

 

がある。

 

 ほかにも、細かく見ていけば、技術者が生産性を高めることができる環境の用意、各成果物品質のチェック、チームメンバへの動機づけ、適切な権限委譲などの、多くの役割を持っている。これらはいずれも、プロジェクトを失敗に終わらせないために必要な役割である。

 

 プロジェクトマネージャは、このような広範囲にわたる役割を担う。これだけの役割を持ちプロジェクトを進めていくには、ケーススタディや経験則によるマネジメントでは無理がある。

 

 さらに、「ひとつとして同じプロジェクトはない」という原則に立てば、ケーススタディでプロジェクトマネジメントを行う限界はおのずと見えてくるはずだ。例えば、大規模プロジェクトを複数のベンダに委託して行う場合と、中小規模のプロジェクトを1社に発注して行う場合では、マネージャが介入するレベルや移譲する権限などが異なる。さらに、プロジェクトが置かれている前提や要求・技術要素などの異なる要因に対応しなければならない。プロジェクトマネジメントにも、体系的な知識が必要である。

 

利害関係者との合意

 利害関係者の合意なくして、プロジェクトのゴールを決めることはできないだろう。プロジェクトの成果物に対する合意、意思決定プロセスに関する合意、制約事項に関する合意など、さまざまな形で、利害関係者との合意を進めていかなければならない。システム開発にスピードが求められる中、迅速に利害を調整し合意を得ることが、生産性に大きく影響することは言うまで
もない。

 

計画の立案と実施

 プロジェクトを受注する場合の見積もりは、ユーザ企業からの発注を受ける前提で作られたものであり、そのプロジェクトにどれだけのコストが必要かという観点で考慮されたものではない。

 

 システム開発プロジェクトは、変化が激しく、変更が多発する。このような特性から、プロジェクトを計画することに否定的な見方をしているプロジェクトマネージャは多い。確かに、プロジェクトの具体的な要求は、プロジェクトが進んでいかないとわからない。そして、プロジェクトの進行に従って、ユーザからの要求はどんどん膨らんでいく傾向にある。

 

 さらに、プロジェクトメンバの生産性は、プロジェクトの作業が開始されるまでわからない。そのうえ、プロジェクトメンバの生産性にはバラつきがある。

 

 だからこそ、綿密に計画する過程の中で、プロジェクトの不確定要素の抽出・分析を行うべきなのである。綿密な計画を行うことなく、適材適所に要員をアサインすることはできないし、綿密なスケジュールなくして納期に間に合うようにプロジェクトを実施することもできないと心得ることだ。

 

 そして、不明点をクリアにし、変化を取り込みながらプロジェクトを実施していくのである。つまり、プロジェクトの計画は、実施する上で必要なマネジメントプロセスまで含めて、入念に計画する必要がある。

 

 しかし、プロジェクトの初期段階の計画は、プロジェクトが終了した後から見れば、大きく逸脱していることはいうまでもない。計画というのは、なんらかの変更に伴い修正されるべきものである。

 

 計画において特に重要視されるのは、個々のチームやプロジェクトメンバの役割・責任・権限を明確に決定し、プロジェクトに必要な作業や責任に空白やグレーゾーンがないようにすることである。

 

 綿密に計画し、変更に対応しながら、常にプロジェクトのゴールを忘れることなくプロジェクトを運営していくことが求められている。

 

情報提供

プロジェクトにおいて、多数の利害関係者それぞれが自分自身の役割に応じた作業をスムーズに行うためには、情報の共有が不可欠であることはいうまでもない。情報を適切に共有するための手段を講じるのもプロジェクトマネージャの重要な役割である。適切に会議を設定したり、資料を配布して徹底したり、コミュニケーションを促進していくことが求められている。

 

意思決定

 プロジェクトマネージャの一番大きな役割は意思決定である。そして、意思決定を求められるケースはさまざまだ。スケジュールが遅れたときのリソース割り当ての変更、QCDのバランス、もろもろの問題解決策の決定など、プロジェクトの状況を把握し、迅速に意思決定を行わなければならない。

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