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8.4. KKD(経験・勘・度胸)からの脱却

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 プロジェクトマネジメントを成立させるうえでは、KKDという価値観を捨て、安易にKKDを容認しないことが最重要課題である。そのためには、KKDという価値観とプロジェクトマネジメントが本質的に異なるものであることを認識しなければならないだろう。

 

 日本のシステム開発におけるプロジェクトマネジメントがKKDを基本に成立している理由は、日本人独特の文化や風習に基づいている。その文化に対する理解を新たにすることなく、KKDからの脱却は難しい。

 

 日本においては、「肝心なことは言葉では伝わらない」という意識が強い。「目は口ほどに物をいう」「以心伝心」など、それらを表す独特な日本語がある。

 

 以心伝心は、もともとは仏教からきた言葉で、奥義や悟りは言葉や文字で伝えられるものではなく、師の心から弟子の心へ伝えられるということを意味している。

 

 日本人には、このような考え方が古来より染みついており、技術継承に関しても、「技術は目で盗め」というように、理論化・明文化・論理化された体系的な方法論が誕生し、育成されていく素地がないのである。

 

 理論化の対局としての「経験則」、明文化の対局としての「勘」、論理化の対局としての合理性を欠いた「度胸」が幅を利かせるのは、体系的な方法論の否定という日本古来の文化や風習という前提を否定できない。

 

 こうした状況の背景には、文化的にあまり差異のない、ほぼ同一民族の社会であったことが大きい。例えば、知識・教養などのバックボーンがほぼ同等であれば、共通の土俵のうえで話ができる。そのため、わざわざ手間をかけ、微妙なニュアンスや正確性を失いがちな、言語化し理論化していくという必要性が希薄なのである。

 

 言葉にすることによって、非常に伝えにくくなるニュアンスやセンスなどを考えると、現代日本の情報処理産業におけるOJTという名の徒弟奉公にも意味がある。ただし、それは「親方が有能で」「知識・技術の陳腐化のスピードが遅く」「明文化されているもの以外の、感覚的なものの占める要素が少ない」といった条件を満たす場合に限定される。少なくともプロジェクトマネジメントはそのような仕事ではない。

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